3.STEP2 耐震改修

耐震改修の種類と特徴

耐震診断により耐震改修が必要と判断された場合は、耐震改修工事を行いましょう。
目標とする性能や施工の条件、コスト、工期などによって様々な工法があります。
耐震改修の実施によって、建物の倒壊からの安全確保や、建物の損傷の抑制により継続使用が可能となります。
耐震改修には大きく分けて、耐震補強、制震補強、免震補強の3つの方法があります。
それぞれの方法には特徴があり、性能や施工の条件、コスト、工期などを考慮して選択する必要があります。耐震改修を行う際は設計者や施工者に十分説明を受け、納得してから工事を行うようにしましょう。
耐震改修は建物の固さや粘り強さを向上させることにより必要性能を確保するものです。また、耐震改修に複数の工法を組み合わせて行うこともあります。

後打ち壁の増設 鉄骨枠組補強 外付け鉄骨補強
新たな壁を鉄筋コンクリート等で増設し耐震補強を行います。建物の内部、外部を問わずに設置できます。
後打ち壁の増設
柱・梁に囲まれた中に鉄骨ブレースを増設することにより耐震補強を行います。開口部を残しながら耐震性能を向上させることが可能です。
鉄骨枠組補強
建物の外側に鉄骨ブレースを増設することにより耐震補強を行います。既設の壁やサッシュの解体が少なく済みます。
外付け鉄骨補強
バットレスの増設 柱巻き付け補強 耐震スリットの新設
耐震壁などの構造躯体を建物の外部に増設することで耐震改修を行います。建物周辺や敷地に余裕がある場合に適しています。
バットレスの増設
既存の柱に繊維シートや鋼板を巻きつける方法で耐震補強を行います。マンション等、各住戸均等に対応する場合に適しています。
柱巻き付け補強
鉄筋コンクリート造の既存建物の柱に近くに隙間を設けて柱の粘り強さを向上させます。これ以外の補強方法を組み合わせて行うことが一般的です。
耐震スリットの新設
重量低減 免震構造化 制震機構の組込
構造体等の一部を撤去することによって全体の重量を低減させます。これ以外の補強工法を組み合わせて行うことが一般的です。
重量低減
免震装置を建物の基礎下や中間階に設けることで地震力の建物への入力を大幅に低減することにより、構造体の損傷低減を図ります。
免震構造化
制震補強は制震ダンパーなどで、建物に影響を与える地震力を吸収することにより、構造体の損傷低減を図ります。
制震機構の組込

その他の工法等

これら以外の工法による耐震改修工事も行われています。なお、工法によっては、施工業者が指定されているものがありますので、十分に確認してください。

耐震改修費用について

耐震改修の費用は、建物の設計図の有無や建物の形状、建築年数等により異なりますが、設計・工事監理・改修工事(躯体工事のみ)の合計で、平均的な費用は下の表のとおりです。また、耐震改修工事と合わせて設備機器のリニューアルや内外装の改修工事を同時に行うことにより、個別に改修工事を行うよりも費用・工期とも低減できることがあります。

耐震改修費用

耐震改修費用について

内外装材の耐震化

内外装材はさまざまな材料があり、取り付け方法もさまざまです。内外装材の耐震性は、取り付けられる建物の構造体と密接に関係しているため、建物の耐震化と同時に内外装材の耐震化を行うことが大切です。建物が壊れなくても、出入り口の扉が開かなかったり、天井が落ちて逃げ道がふさがれるなど、機能的不具合が随所に起きます。建物の専門家に相談して状況に応じて対策を講ずることが必要です。

建築設備の耐震化

地震時、被害設備機器類については、特に最上階や塔屋あるいは屋上設置機器の架台部の固定・接続部分、機器類、機器架台の折損、付属部品が移動したり転倒するといった被害がおこります。 エレベーターの耐震化も重要であり、設置されているエレベーターを調査し、必要な対策を講じることが重要です。

昇降機耐震設計基準の変遷