地震による負傷原因の30%~50%は家具類の転倒・落下が原因
近年発生した大きな地震での負傷原因を調べると、30~50%が家具類の転倒・落下によるものでした。
新潟県中越沖地震発生後の柏崎市民へのアンケート調査でも、約94%の家庭で家具類の転倒・落下が発生していました。
また、東京都防災会議の被害想定によると、東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が冬の夕方(18時)に発生した場合、都内全域で約54,500人が家具類の転倒・落下(屋内収容物の移動・転倒)により負傷すると想定されています。
家具類の転倒・落下は、つまずいて転んだり、割れた食器やガラスでけがをするなど、いろいろな危険をもたらします。家具類の転倒・落下防止対策は建物の耐震化と並んで、非常に重要かつ効果的な地震対策です。
地震によって家具類がもたらす被害
転倒・落下防止対策をしていない家具類が、地震の揺れによってもたらす被害には次のようなものがあります。
家具の挙動 | |
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被害傾向 | |
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家具類の転倒・落下防止の方法
一般に、家具を対象とした転倒防止には、大きく分けて次の3つの方法があります。
L型金具やベルト式の器具等で壁や付け鴨居などに直接ネジ固定する方法
対策のポイント!
- 転倒防止対策の基本は、ネジによる固定である。その場合、家具を固定する対象は、柱や壁の下地材である間柱、胴縁等とする。
- 木ネジは長めのものを使用し、ネジ頭までしっかりねじ込む。
- 付け鴨居は、強度が確認された場合、これに固定することが可能である。
- 上下2段式の家具などは、金具などで連結する。
※間柱の位置を見つけるには、下地探知用センサー等の機器、市販の専用プッシュピンといった器具、打診での音によって、判断できます。
家具の上部と天井の間に、ポール式(つっぱり棒式)や、すき間家具などで家具を固定する方法
対策のポイント!
- ポール式や隙間家具式を使用する場合は、家具の下にストッパー式やマット式と併用する。
- ポール式はできるだけ奥に取り付ける。
- ポール式を取り付ける際は、天井に十分な強度(マンションのコンクリート天井など)があることを確認する。
- ポール式は奥行きのない家具、天井との間隔が大きい場合には不向きである。
ストッパー式、粘着マット式で家具類の転倒を防止する方法
対策のポイント!
- ストッパー式は、家具の端から端まで敷く。
- ストッパー式、マット式は大きな家具での単独使用は一般的に適さないため、他の方法と併用する。
安全な家具の置き方
家具の置き場所は、使いやすさ第一のレイアウトになりがちです。しかし同時に地震時の安全も考慮しておく必要があります。家具類を固定しておくことはもちろんですが、万が一、固定していた器具がはずれて転倒した場合でも、被害を受け難いレイアウトの工夫を行うことが大切です。
避難経路を確保した配置とする
普段使っている場所の周辺には背の高い家具を置かない
家具の上に物を置かない
オフィス家具を間仕切壁代わりに使用しない
オフィス等で、室内の中央に間仕切り壁の変わりに大型のオフィス家具を配置することは、固定が床に限られることになります。大型のオフィス家具は、壁に沿って配置し、床・壁と固定するのが確実な転倒・落下防止方法です。
床の材質と家具の転倒
フローリングのような滑りやすい床よりも、滑りにくい床に置いた家具のほうが、転倒しやすい傾向があります。
一方、滑りやすいフローリングやPタイルのような床では、地震動による家具類の移動が大きくなり、何かに当たると転倒するケースもあります。いずれも家具は必ず壁、床に固定する必要があります。
火気の周辺に物を置かない
参考文献
東京消防庁「家具等の転倒・落下防止対策ハンドブック」
東京消防庁「家具等の転倒・落下防止対策Q&A」
東京消防庁HP(地震に備えて)
東京消防庁HP(トップページ)
https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/
「首都直下型地震による東京の被害想定」(平成18年5月東京防災会議)