5.STEP4 耐震改修

耐震改修計画の策定

耐震改修計画の検討は、「耐震改修工法」、「資金調達」、「費用負担」の各項目を並行して検討しつつ、管理組合としての資金計画および区分所有者の費用負担額を整理して「原案」を作成します。「原案」を基に、区分所有者の意向や関係機関との協議を反映しつつ、修正を加え、「最終案」を策定します。耐震改修決議の成立に向けて、耐震改修計画を段階的に練り上げながら合意形成を進めるためには、区分所有者の個別事情への対応や、非賛成者への対応などが重要となります。合意が得られない区分所有者に対しては、賛成できない理由や事情を正確に把握し、できる限り多くの人が参加できるような計画とすることが大切です。

耐震改修工法の選定

耐震改修を行うためには様々な工法が考えられます。それぞれの工法について効果、工事費用、工期、居住者への影響などの観点から十分な比較検討を行いましょう。

耐震改修工法の選定

資金調達の基本方針

耐震改修工事費用等は、まず修繕積立金でまかなうことが考えられますが、修繕積立金が不足している場合には、区分所有者からの一時金徴収や金融機関からの借入金等でまかなう必要があるため、資金調達および返済についての基本方針を検討する必要があります。なお、耐震改修工事等への助成制度が活用できる場合もあるので、区市の相談窓口に確認して下さい。

区市町村 助成制度一覧(木造)

区市町村 相談窓口

■資金調達のパターン

修繕積立金の積立状態 耐震改修工事費等の資金源 検討事項
まかなえる 修繕積立金の取り崩し
  • 大規模修繕等について
    長期修繕計画の見直し
不足する 区分所有者一時金徴収 個人借入れ
  • 住宅金融支援機構等との協議
自己資金
管理組合で借り入れ
  • 住宅金融支援機構等との協議
  • 修繕積立金の徴収額の見直しと長期修繕計画の見直し

資金調達の基本方針

耐震改修工事費用等は、まず修繕積立金でまかなうことが考えられますが、修繕積立金が不足している場合には、区分所有者からの一時金徴収や金融機関からの借入金等でまかなう必要があるため、資金調達および返済についての基本方針を検討する必要があります。なお、耐震改修工事等への助成制度が活用できる場合もあるので、区市の相談窓口に確認して下さい。

耐震改修費用

費用負担の基本方針

耐震改修工事によって設置される耐力壁や外付けフレーム等は、建物躯体の一部を構成することから、区分所有法上、共用部分に該当します。また、耐震改修工事による耐震性能の改善効果は、全ての区分所有者が共通して享受できるものです。こうしたことから、耐震改修工事費用の費用負担にあたっては、通常の修繕費用と同様に、共用部分の共有持分割合を配分率として負担しあうことが原則です。
ただし、耐震改修工事により特定の専有部分に一定以上の影響が生じる場合には、合意形成の状況を踏まえ、その影響の程度を費用として捉え、耐震改修費に加算して区分所有者間で負担することも考えられます。

耐震改修決議と耐震改修実施設計の予算化

理事会は耐震改修計画についての検討結果を踏まえて、「共用部分の変更に関する事項」「耐震改修実施設計を行うための資金の拠出に関する事項」を管理組合の総会の議案として提起し、決議します。

■耐震改修決議と耐震改修実施設計の予算化

  議案内容 議事資料 議決の多数決要件
議案1
耐震改修決議:共用部分の変更について
耐震改修計画に基づき、共用部分を変更(耐震改修)すること 耐震改修計画 特別多数決議:区分所有者及び議決権の各4分の3以上(軽微変更の場合は過半数)注:専有部分への特別の影響を及ぼす場合は、その専有部分の所有者の承諾が必要
議案2
耐震改修実施設計を行うための資金の拠出について
(1)管理費から拠出する場合
  • 耐震改修実施設計を行うための資金を管理費(管理組合運営費)から拠出すること
  • その予算は○○円とすること
事業計画、予算案 普通決議:区分所有者及び議決権の各過半数
(2)修繕積立金から拠出する場合
  • 耐震改修実施設計を行うための資金を修繕積立金から拠出すること
  • 修繕積立金を取崩して拠出する予算額は○○円とすること
事業計画、予算案 普通決議:区分所有者及び議決権の各過半数
参考資料:耐震改修実施設計の内容、参考見積もり等

耐震改修実施設計

耐震改修決議に基づき、専門家に依頼し耐震改修実施設計を作成し、必要に応じて耐震改修促進法に基づく耐震改修計画の認定手続き又は建築確認手続きを行います。
耐震改修促進法に基づく耐震改修計画の認定手続きを行うことにより、建築確認の手続きが不要になり、認定を受けると、建築基準法の既存不適格建築物に係る制限の緩和、耐火建築物に係る制限の緩和等を受けることができます。なお、耐震改修計画の認定は申請することができるものであって、耐震改修を行う場合に必ずしも受けなければならないものではありませんが、特例措置や支援制度の面で有効です。
耐震改修促進法に基づく耐震改修計画の認定を受けない場合は、建築基準法に基づく手続きに従うこととなります。耐震補強等で模様替えにあたる工事のうち、主要構造部を過半にわたり大規模に模様替えをする場合については、建築確認の申請が必要です。

耐震改修工事の予算化

耐震改修実施設計が作成され、必要な手続きを終えれば、理事会として耐震改修実施設計の設計予算書を参考に、耐震改修工事の予算化の資料作成し、「耐震改修工事の予算に関する事項」を管理組合の総会の議案として取りまとめ決議します。

■耐震改修工事の予算化

  議事内容 議事資料 議決の多数決要件
議案1:
耐震改修工事を行うための資金の拠出について
(1)修繕積立金から拠出する場合
  • 耐震改修工事を行うための資金を修繕積立金から拠出すること
  • 修繕積立金を取崩して拠出する予算額は○○円とすること
事業計画、予算の案 普通決議:区分所有者及び議決権の各過半数
参考資料:工事内容、設計予算書、工事スケジュール等

耐震改修工事の実施

耐震改修工事は工事・監理の係る専門家を選定し実施します。工事は建設会社等の施工の専門家を新規に選定する必要がありますが、監理については、耐震改修実施設計の作成について、支援を得た専門家がいる場合は、その専門家に引き続き協力を依頼するという方法が一般的です。また、補助金等を受ける場合には、事前に地方公共団体に選定手続き等について確認しておく必要があります。

区市町村 助成制度一覧(マンション)

内外装材、設備の地震対策

内外装材の耐震化

内外装材はさまざまな材料があり、取り付け方法もさまざまです。内外装材の耐震性は、取り付けられる建物の構造体と密接に関係しているため、建物の耐震化と同時に内外装材の耐震化を行うことが大切です。建物が壊れなくても、出入り口の扉が開かなかったり、天井が落ちて逃げ道がふさがれるなど、機能的不具合が随所に起きます。建物の専門家に相談して状況に応じて対策を講ずることが必要です。

建築設備の耐震化

地震時、被害設備機器類については、特に最上階や塔屋あるいは屋上設置機器の架台部の固定・接続部分、機器類、機器架台の折損、付属部品が移動したり転倒するといった被害がおこります。
エレベーターの耐震化も重要であり、設置されているエレベーターを調査し、必要な対策を講じることが重要です。

昇降機耐震設計基準の変遷