3. 耐震改修が命を救う

耐震改修とは?

耐震診断の結果、耐震性が不足していたとしても耐震改修を行うことで、大地震に対して、現在の耐震基準で建てられた建物と同等の耐震性を確保することが出来ます。
耐震改修のためには、耐震診断を実施し、現在の建物の耐震性を確認するとともに、目標の耐震性を実現するための補強設計を行う必要があります。その後、補強設計に従って、耐震改修工事を行います。
耐震改修工事には次のような方法があります。

【木造住宅の場合】

基礎の補強 はり・土台・柱・筋かいなどの
接合部の補強

基礎の補強


  • 玉石に束立てしただけの柱は、鉄筋コンクリート造の布基礎とし、アンカーボルトで土台と一体にしましょう。
    【費用3万円/m(基礎長さ)】
  • 基礎の底盤の幅が不足していたり、基礎に鉄筋が入っていない場合には、基礎を増し打ちするなどして、既存のコンクリート造布基礎を補強しましょう。
    【費用2~3万円/m(基礎長さ)】
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基礎の補強

はり・土台・柱・筋交いなどの接合部の補強


  • 土台・柱・筋かい・はりなどの接合部は専用の金物等を使って、それぞれの部材が一体となるよう緊結しましょう。
    柱と土台→アンカーボルト、ホールダウン金物
    【3千円/箇所(※3)】
    柱とはり→羽子板ボルトによる引き止め
    【3千円/箇所(※3)】
    柱とはりと筋かい、柱と土台と筋交い→筋かいプレート、ひら金物とT型もしくはV型金物柱と土台と筋かいの併用
    【費用3千円/箇所(※3)】
    (※3)外壁等の補修工事は別途費用がかかります。

はり・土台・柱・筋交いなどの接合部の補強

筋かいを入れたり、構造用合板をはって
強い壁(耐力壁)を増やす補強
屋根の軽量化

筋かいを入れたり、構造用合板を張って強い壁(耐力壁)を増やしましょう


  • 柱、はりだけでは地震の力に抵抗できません。開口部(ガラス戸)を減らし、筋かいや構造用合板で補強された壁を増やしましょう。壁を釣合いよく増やすことにより、より大きな地震の力に耐えられます。
    隅部を壁にすると一層効果的となります。
    【費用12万円/箇所(壁長910cm)】

筋かいを入れたり、構造用合板をはって強い壁(耐力壁)を増やす補強

屋根の軽量化


  • 屋根を軽くすることによって、建物に作用する地震の力が減るので、大地震時に壊れにくくなります。
    【費用1万円/m²(※4)】
    (※4)野地板の張替え、足場の組み方により別途費用がかかります。
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屋根の軽量化

【鉄筋コンクリート造等の建物の場合】

後打ち壁の増設 鉄骨枠組補強 外付け鉄骨補強

新たな壁を鉄筋コンクリート等で増設し耐震補強を行います。建物の内部、外部を問わずに設置できます。

後打ち壁の増設

柱・梁に囲まれた中に鉄骨ブレースを増設することにより耐震補強を行います。開口部を残しながら耐震性能を向上させることが可能です。

鉄骨枠組補強

建物の外側に鉄骨ブレースを増設することにより耐震補強を行います。既設の壁やサッシュの解体が少なく済みます。

外付け鉄骨補強

バットレスの増設 柱巻き付け補強 耐震スリットの新設

耐震壁などの構造躯体を建物の外部に増設することで耐震改修を行います。建物周辺や敷地に余裕がある場合に適しています。

バットレスの増設

既存の柱に繊維シートや鋼板を巻きつける方法で耐震補強を行います。マンション等、各住戸均等に対応する場合に適しています。

柱巻き付け補強

鉄筋コンクリート造の既存建物の柱に近くに隙間を設けて柱の粘り強さを向上させます。これ以外の補強方法を組み合わせて行うことが一般的です。

耐震スリットの新設

重量低減 免震構造化 制震機構の組込

構造体等の一部を撤去することによって全体の重量を低減させます。これ以外の補強工法を組み合わせて行うことが一般的です。

重量低減

免震装置を建物の基礎下や中間階に設けることで地震力の建物への入力を大幅に低減することにより、構造体の損傷低減を図ります。

免震構造化

制震補強は制震ダンパーなどで、建物に影響を与える地震力を吸収することにより、構造体の損傷低減を図ります。

制震機構の組込

耐震改修の費用

耐震改修工事に必要な費用は建築物の構造、規模、改修の程度、図面の有無等により異なります。平均的な費用は下の表のとおりです。

耐震改修費用の目安

  木造住宅 鉄筋コンクリート造建物
改修費用 (木造住宅1棟当たり)
150万円/棟~200万円/棟
(床面積1m²当たり)
15,000円/m²~50,000円/m²
備考 在来工法(構造用合板や筋かいによる補強)で標準的な評点差の場合(補強前0.5程度~補強後1.0程度)。 建築物の規模、改修の程度等により異なります。設計・工事監理・改修工事(躯体工事のみ)の合計。

耐震補強をすれば命は助かる?

独立行政法人防災科学技術研究所のE-ディフェンス(実大三次元震動破壊実験施設)では、旧耐震基準で建設された、ほぼ同じ仕様の2棟の既存木造住宅を、一方は現在の耐震診断・耐震補強の技術で補強し、一方は無補強のまま、阪神淡路大震災に相当する地震波による振動実験をおこないました。

阪神淡路大震災に相当する地震波による振動実験

この実験から、耐震補強の効果は大きく、適切な補強を行うことで、大地震においても建物の倒壊を免れることが可能であるということが分かります。

一棟一棟の耐震化が地震に強い安全な都市をつくる

地震に弱い建物は自分や家族の命、財産を守る上で非常に大きなリスクであるばかりでなく、地震により建物が倒壊し、道路を塞ぎ、救急・消火活動の大きな障害になり、復旧・復興の支障にもなります。大地震はいつ起こるか予測することは困難です。地震に強い安全な都市づくりのためにも、今すぐ耐震化に取組んでください。

表層地盤のゆれやすさ(東京都)